
こちらへ引っ越して来て、海の幸の味には、いただくたび、その都度、美味しくて驚かされますが、海藻の味に、ハッとさせられるような事が多いです。
5月は、漁が解禁になって軒並みこの辺りの家々が庭先に、わかめを干している風景に出会えます。干したてのわかめの味は最高で、これだけ、美味しい!と感じるのは、太陽の力を体の中に取り入れ身体が喜んでいるのを感じます。まさに、海の一部をいただいている感覚。
海辺の香り、というものも、毎日、時間帯によって変化して、面白い。村中でわかめを干しているので、日差しの強い日中は、磯の香りがいつもに増して濃厚になります。夕飯の後日没の頃に散歩に出かけると、海辺の香りが、なぜだかわからないのですが、まるで薬湯のような香りに満ちてきて、深く深呼吸するとても心地良い。そこにどこからかの夕飯のおかずの匂いも加わったりして。
海辺の暮らしというのが、こんなにも、味覚嗅覚を刺激してくれるものとは、想像以上でした。
わかめ一つとっても、食べる場所、調理法によって様々な味を楽しませてもらえます。わかめといえば、これまで食べていたのは、小さくカットして干したものか、塩蔵わかめといった、たくさんの塩につけてあるしっとりとした保存食のわかめくらいしかほとんど馴染みがなく、茎わかめも好きなので、スーパーなどでみつけると塩漬けのものを入手していましたが、ここ越前海岸で手に入るわかめは、めかぶや茎の部分など、新鮮なものが手に入るので、葉の部分もそうですが、しゃぶしゃぶにして瞬時に色が変わるのを楽しみながら食べる食べ方、あとは網に乗せて直火焼きも味が深まりとても美味しいです。
一番手軽なのが干しわかめで、生では食べることの出来ないわかめの茎と葉の部分を1日干しただけなのですが、パリパリで、口の中に広がる美味しさには、子供達も手が止まりません。
茎の部分を干したものも、とても美味しいです。このまま噛めば噛むほど味が出るおつまみでも良いですし、素揚げも良いとのこと、少し煮ると、味が深く、しみじみします…。そして旬が同じ季節の筍も、よくご近所の方などからいただくので、若竹煮に。さらに鯛を釣ったよ、フクラギがとれたよ、とおすそ分けをいただくので、特に春は、最高のご馳走をいただけます。
わかめがどんな風に海の底に生えてて、どんな風に刈り取られるかなんて考えたこともなかったですが、ここへきて、いろんなこと、初めて知識を得ています。刈りとる人が鎌を持って潜って、水深1メートルから2メートルくらいのところで株元を刈り取るそうですが、なかなか、簡単ではありません。潮の凪いだ天気の良い日に潜るそうです。海は刻々と変化するので、波を読み、風を読み、海に入ります。息子の保育園でも、年長さんになるとわかめ採りをやらせていただけるそうですので、今から楽しみにしています。
それに、全国的に出回っているわかめは、ほとんど養殖物であるのに対し、ここ越前海岸のわかめは全て天然物。美味しさの秘密はここにあるのかも知れません。