舞台美術のための版画を制作しました。

魔法の笛(シェヘラザードより)

  • トリスタン・クリングゾール 作詞
  • モーリス・ラヴェル(1875 – 1937)作曲
魔法の笛1
魔法の笛 2

木陰は快適で 私のご主人さまは寝ている

先の尖ったシルクの帽子を被り

ながく黄色い鼻は白いひげに覆われている

だけど私はまた目を覚まして

外の音に耳をかたむける

笛の音が流れ出し

悲しみと歓びがかわるがわる流れる

やるせなさと たわいなさが

かわるがわる流れる

あれは私の愛する人が奏でる音色

私がガラスの窓辺に寄ると

一音一音が舞い上がっていくようだ

笛から 私のほうにむかって

ミステリアスな接吻のように

 

三人のジプシー(リスト)

  • ニコラス・レーナウ(1802-1850)作詞
  • フランツ・リスト(1811 – 1886)作曲
三人のジプシー

三人のジプシーを私はかつて見た
一本の柳のそばに寝そべっているのを
私の荷車が 疲れ果てた苦しみで
砂まみれの荒地を忍び行きしとき

 

一人目がたったひとりで持っていたのは
その手の中のフィドル
弾いていた たそがれの光に包まれて
陽気な調べを

 

二人目は口にパイプをくわえて
その煙を眺めていた
うれしそうに、まるでこの地上に
これ以上の幸せがないかのように

 

そして三人目は心地よく眠っていた
かれのツィンバロンを木に吊るして
その弦の間を 風が吹き抜けて行き
彼の心の中には 夢が響いていた

 

彼ら三人の着ている服には
穴やらとりどりの継ぎやら
だが彼らはまったく気ままに
この世の運命など笑い飛ばしていたのだ

 

三通り 彼らは私に示してくれた
私たちの人生が夜闇に惑う時にも
いかに人は眠り、喫い、奏でて
この人生を三様に笑い飛ばすのかを

 

このジプシーたちをもっとずっと
私は通り過ぎながら見つめなければならぬ
彼らの浅黒いその顔を
彼らの黒いその髪を

 

ローレライ(リスト)

  • ハインリヒ・ハイネ(1797 – 1856)作詞
  • フランツ・リスト(1811 – 1886)作曲
ローレライ

どうしてこんなに悲しいのか

それが自分でもわからない

古くから伝わる民話が

頭からついて離れない

空気は冷たく 日は暮れなずみ

ラインはおだやかに流れている

山の頂きは夕日をうけて

きらめきかがやいている

この上なく美しい乙女が頂きに

魅惑的な姿で座っている

黄金の飾りを身につけ

ブロンドの髪を梳きながら

歌を歌っている

そのメロディは聞く人の心に

あやしく訴えかけてくる

それを聴くと小舟に乗った舟人は

切ない悲しみに襲われ

暗礁が近くにあるのも忘れ

ただ頂きを見上げているばかり

そして舟人は小舟もろとも

波に呑み込まれてしまった

それはローレライの

歌のためだったのだろう

 

異郷の夕べ

  • アルベール・サマン (1858 – 1900)作詞
  • フィリップ・ゴベール(1879 – 1941)作曲
異郷の夕べ(港)
異郷の夕べ(三人のニンフ)

それはばらと琥珀の美しい夕暮れ

岬の上のアドニスの宮殿には

黒い柱の影が金色の背景に浮かび

そして一番星が海の上に輝く

一本の葦笛がゆっくり奏でる彼の地

パン(牧神)が肘をついていた山々からその身を起こす

砂浜をはだしで踊るニンフ達を見る為に

古い港は東洋の船の香りで満たされ

女たちは小声で話し時間のない世界を費す

噴水(泉)の淵につぼを置き

繋がれたつがいの内が敏(あぜ)から帰る

シリアのバラの香りの夜は来た

澄んだ三日月のディアンヌはこよい夢の中

銀色の光に染まる黒い森の奥で

アンディ美音の目に言葉では表せない接吻を