山梨の自然派ワイナリー「共栄堂」にて、2019年に発売されたヴィンテージには、おさのなおこの作品がエチケットとして採用されました。
今回は「詩と版画」をコンセプトとし、詩編から着想を得て作品を彫り上げました(※)。
※2019年冬発売のヴィンテージに採用された作品「珊瑚礁」だけは旧作です。
2019年冬発売 K18FY_SR / DD / AK
珊瑚礁
ホセ・マリヤ・デ・エレディヤ
波の底にも照る日影、神寂びにたる曙の
照しの光、亜比西尼亜、珊瑚の森にほの紅く、
ぬれにぞぬれし深海の谷隈の奥に透入れば、
輝きにほふ虫のから、命にみつる珠の華。沃度に、塩にさ丹づらふ海の宝のもろもろは
濡髪長き海藻や、珊瑚、海胆、苔までも、
臙脂紫あかあかと、華奢のきはみの絵模様に、
薄色ねびしみどり石、蝕む底ぞ被ひたる。鱗の光のきらめきに白琺瑯を曇らせて、
枝より枝を横ざまに、何を尋ぬる一大魚、
光透入る水かげに慵げなりや、もとほりぬ。忽ち紅火飄へる思の色の鰭ふるひ、
藍を湛へし静寂のかげ、ほのぐらき清海波、
水揺りうごく揺曳は黄金、真珠、青玉の色。
2019年夏発売 K18bAK_DD / AK
至上善
ロバアト・ブラウニング
蜜蜂の嚢にみてる一歳 の香も、花も、
宝玉の底に光れる鉱山の富も、不思議も、
阿古屋貝映し蔵せるわだつみの陰も、光も、
香、花、陰、光、富、不思議及ぶべしやは、
玉よりも輝く真、珠よりも澄みたる信義、
天地にこよなき真、澄みわたる一の信義は
をとめごの清きくちづけ
2019年秋発売 K18AK_DD
F930 / J883
エミリ・ディキンスン
詩人はランプに火を点すだけ
彼ら自身は消えてゆく
彼らの活気づける灯芯は
もし光に命があるならば恒星のように永くもつ
おさのなおこ、小林剛士、柿本礼子共訳
各時代がレンズとなり
それぞれの円周を
押し広げる