版画ゆうびん

おさのなおこが綴る越前海岸からの版画の便り

私の住むまち

小丹生(こにゅう)の町。家の裏手から、少し行ったところに鳥居があり、その鳥居をくぐったさきに急な崖を登る階段があり、登りきったところに春日神社があります。そこから、大丹生(おにゅう)と小丹生の町を一望できます。この地で生まれ育ったガラス作家の長谷川渡さんが初めてこの地を案内くださった日に、連れて行ってくれた場所でもありました。

引っ越してきてからも、度々、急な階段を登っては、ここの風景を眺めるのが好きでした。

まあるい湾になった海岸の道沿いに家々が立ち並び、それを囲むように山々が包み込んでいます。その北と南に海と山が海岸に沿って長く続いており、この山々のところどころには海岸段丘が隠されており、海岸線から少し登ったところの田園からは、どこからも海を見渡せる。越前海岸はなんとも美しい、そしてユニークな土地です。

北は石川県方面、南は敦賀方面をつなぐ国道305号線がこの海岸線ですが、ここをただ通り過ぎてゆくドライバーも多いけれど、越前海岸に立ち止まって佇めば、小さい地域に海と山の恵みが凝縮していて、とても優雅な時間が流れていることに気づきます。

真夏の炎天下の日でも、春日神社の木陰に辿り着けば、この上なく心地よい海からの風が吹き抜ける高台。ある日は、気づけば1時間以上この風景をスケッチして時を過ごしていました。

ここの風景の美しさ、空気感を伝えるにはとても拙い表現ですが、木版画にしました。気づけば今は秋の始まり。一生のうちにいくつ、ここの風景に近づく作品を作れるだろうか。

ここだけでなく越前海岸は、素敵な風景で散りばめられています。