花と空と祈り

この作品は、皆川 輪 詩集「木蔭の鳥」のために、その表紙絵の制作依頼を受けたことで描いた何点かの木版画のうちの一点です。
北欧の夏至祭では、太陽の光の力が一年の中で最も強くなるこの日の祭りの儀式として、野山から7種ほどの草花を摘んできて、それを花冠にして大切な人へ贈るという風習があると、フィンランドからきたアーティストに教えていただくことがありました。
そのとき実際に彼女の滞在中の栖のそばの森から摘んで来られた紫陽花などの草木で作られた花冠を、その場にいあわせた人たち全員に被らせてくれたのでした。
花冠をかぶることで、かぶったその人の内側にある光が輝き出すようにもみえ、素敵な慣習だなと感激しました。自然のエネルギーをいただく、という行為は、太古より人間にとってとても大切な営みであると、改めて感じました。
その時から夏至の日前後に友人が家に訪れてくれたりする機会があると、紫陽花などの草花を裏山などから見つけてきては花冠を作り、かぶってもらうようにしています。
「花と空と祈り」の木版画は、この花冠を絵の中で編みあげたくて制作しました。花冠の中から木蔭の鳥が顔を覗かせています。 タイトルは、ちょうどその時に見つけた、皆川輪さんとの書簡の中に挟み込まれていた八木重吉の詩稿のタイトルからいただきました。
以下はその文書です。
詩をよむ時をえらびなさい
あるひとつの詩をよんだというても
百人あれば百様によむのですから
たかいうつくしいこころのときによんだなら
その一篇はたとえ他人のつくったものであっても
あるときは作者よりもっとふかいところにつつんで
それを生涯のたからとすることができる
よむことはいつでもつくることです「八木重吉 詩稿 花と空と祈り」より