版画ゆうびん

おさのなおこが綴る越前海岸からの版画の便り

2025.10.01

「虚」と「実」のあわいで

「虚」と「実」のあわいで

9月のある日、触れた二つの表現世界。
そのふたつの作品の中でそれぞれ描かれていた

「虚」と「実」

に触れて 覚書

実を映し出すために虚を描く。
偽りを貫き通すことで、見えてくる真実。

虚が時には実となり
そして時にはその逆も

実だと広く思われている事柄が、虚であったり
虚と大きく示されていることの中に潜む実。

版画を制作している身としては、
つねひごろ向き合っている、彫られた版と摺られる版画
どちらかが「虚」で、どちらかが「実」であるのか

時には版画のように互いに映し出される ファンタジーと現実世界

その二つを行き来することで、人は生きる光を見出していくのかもしれない。

詩やファンタジーや架空の絵空事無くしては
日々の暮らしの中に希望の光を見出すことは難しい。

この日に触れた二つの表現世界というのが、
友高博之氏の「Sound &Number」 とそして、
たまたま夜に観た映画「八犬伝」でした。  

友高氏のパフォーマンスは「僕は嘘つき」という前置きで始まる、
虚と実が迷宮のように入り混じっていた私小説が縦糸になっていた。
「八犬伝」での馬琴と北斎、そして鶴屋南北との対話の中で映し出されていた  虚そして、実.
偶然同じ日に触れた二つの作品から不思議な感覚を得た。

映画「八犬伝」原作の傑作『八犬傳』山田風太郎作も気になるところ.

この絵を描くときに感じていた自分の中のリアルはどこから来たものだったか。 過去の作品ですが
「ゆっくりと宙(そら)を駆ける」。